シラバス情報

科目名
日本の宗教
授業コード
15009
担当者名
岡本 貞雄
副題
神社神道、仏教(各宗派)
単位数
2.00単位
配当年次
1年
開講学期
2019年度後期
教職免許種類

授業内容
2015年度から始まった科目です。今世界中で紛争が起こっていますが、その原因の大きなものの一つは、宗教による対立です。日本で暮らしていると、意識されにくいのですが、宗教は人々のアイデンティティーに深く根ざしています。その部分が侵されると、命がけで守ろうとするのは、世界的に見れば当たり前のことなのです。そのような世界が注目しているのが、実は日本の宗教なのです。
日本人の多くが、「自分は無宗教である」と言いますが、実際は日本ほどいろいろな宗教に囲まれ、宗教に根差した生活をしている国は珍しいのです。色々な宗教を受け容れつつ、調和させ、自然な生活を営んでいられるのはなぜか、考えてみたいと思います。
日本の宗教の多様性に注目し、歴史的な経緯を踏みつつ、神道、仏教、儒教を見ていき、その複合体としての日本の宗教について考えます。
到達目標と卒業認定・学位授与の方針との関連
自分が関係している日本の宗教について、ある程度話ができ、説明できるようになっていただけるようにしたいと思っています。少なくとも日本人が無宗教であるとの認識は、誤りであると理解し、説明できるようになることを目的とします。身につく力{知識・理解}{論理的思考力・分析力}
授業計画
第1回 日本人の宗教とは一体どのようなものか。我々は一見宗教とはかけ離れた世界で生活しているように     思えますが、果たして本当にそうでしょうか。自分の身の回りから宗教について考えてみます。
第2回 日本人の宗教のルーツを考える。縄文の昔から、日本は豊かな自然から多くの恵みを与えられてきま     した。その原点に迫ります。
第3回 コメ作文化と宗教の関係。豊かな自然からの恵みで生活していた日本に、米作という革命的な出来事     がもたらされ、日本の宗教も変化していきます。
第4回 神道の萌芽、豊かな恵みの中で生かされている日本人は、その恵みをもたらしてくれているものがあ      ることを、感覚的に理解し、神の存在をイメージし、祭祀を考案します。
第5回 外来宗教との関わり。仏教受容と神道。中国、朝鮮半島から仏教が伝えられ、今までのイメージとは違     う畏敬の存在に気づきます。どう対処したかそのプロセスを考えます。
第6回 外来宗教との関わり。儒教は宗教か。仏教以外に儒教も大陸からもたらされますが、日本においては     仏教と混在したものとして理解された面が多くありました。
第7回 鎮護国家としての宗教 支配者たる大和朝廷は、国家の安定をもたらしてくれる、神の力を仏教に求      めました。奈良時代前後の仏教需要について学びます。
第8回 民衆宗教としての仏教 国家仏教として存在していましたが、徐々に民衆の救済をも主張するようにな     ります。行基などの聖と呼ばれる僧たちの活動から考えます。
第9回 日本の仏教(鎌倉新仏教)1浄土思想 民衆が救いを求める際に日本で最も受容されたのは念仏思想     でした。その流れを考えます。
第10回 日本の仏教(鎌倉新仏教)2禅思想 鎌倉時代に主に南宋からもたらされた禅思想は、一所懸命に
いのちのやり取りを自然のこととする武士たちの心の支えになりました。
第11回 日本の仏教(鎌倉新仏教)3法華思想 現代日本の新興宗教の多くは日蓮に代表される法華経思想に     よるものが多くあります。その意味を考えます。
第12回 神道と仏教の交渉 仏教が大きくクローズアップされる中で、日本古来の宗教である神道は仏教の思     想を取り入れ新しい解釈でその存在を民衆の中で確認していきます。
第13回 神道の復活 明治維新の原動力となったのは、古来からの日本の伝統を、確認したことによるものが     多くあります。神道に対する新しい解釈がなされていきました。
第14回 国家神道という信仰形態 明治時代となり、西欧の宗教思想が流入したときに、その神の概念に対抗      し、日本的なもので代替する必要が生じます。その影響は現代にまでつながっています。
第15回 日本の宗教についてもう一度考える。日本の宗教が大きな変化を生じたのは、鎌倉時代と江戸時代     といわれていますが、明治以降の動きをしっかり踏まえる必要があります。
関連科目
前期に開講する「日本の思想と文化」とは密接に関連しています。他に日本の歴史とも関連しています。実際は宗教は、政治、経済とも接点が多いので、じっくり日本の流れとして学んでいく必要があります。
準備学習等の指示
少なくとも日本の歴史について、最低限の知識は持っておいていただきたいと思います。
各講義の後で、次週の内容について述べ、指示いたしますので、それに基づいて参考文献や図書について、2時間程度は読み込み準備してください。また講義内容について、確認するための文献を2時間程度は読み込んでください。
教科書
特に指定はしませんが、自分の生活の中で宗教と関わるものに、敏感になってください。そうすると日本の宗教がいかなるものか見えてきます。
参考文献
末木文美士『日本宗教史』(岩波新書)
井上順考『神道入門』(平凡社新書)
山折哲雄『神と仏』(講談社新書
福井ふみ『小寺の灯』(大東出版社)
定期試験の実施
定期試験を実施します。
成績評価の方法
定期試験の成績を重視(80パーセント)しますが、出席や受講態度も考慮(20パーセント)に入れ評価します。宗教と人間が切っても切り離せない関係性を有しているということを、しっかり認識したうえでの「宗教とは何か」が表明できること、そして日本のアイデンティティーとしての宗教について理解される必要があります。ある程度は種々の宗教についての基礎知識も必要ですので、具体的な宗教集団についての知識も評価の対象になります。
実務経験と授業との関連
備考
連続した講義の中で理解されることがたくさんありますので、しっかり出席してください。