シラバス情報

科目名
研究指導AⅠ (経済政策論特論)
授業コード
71053
担当者名
野北 晴子
副題
単位数
4.00単位
配当年次
1年
開講学期
2022年度前期、2022年度後期
教職免許種類

授業内容
 現代のマクロ経済学の理論と政策は、その基礎をケインズ経済学に負っています。「ケインズ革命」以前の「古典派経済学」は、資本主義経済において「絶対多数の絶対幸福」が市場原理によって自動的に達成されることを説明する経済学でした。このような経済学においては、資源の効率的な完全利用と労働者の完全雇用は、市場メカニズムによって容易に達成されるはずのものであり、政府の役割は「夜警国家間」に基づく「小さな政府」でした。
 これに対して、「ケインズ経済学」では、雇用量は有効需要の大きさによって決定されるとします。生産能力が過剰であるがゆえに投資機会が減少し、有効需要が不足することが原因で失業が発生すると説明します。人々は豊かさゆえに雇用機会を失うという「豊穣裏の貧困」から脱するために、ケインズは、短期的には政府による赤字財政政策の実現による有効需要の拡大と、生産能力を拡大しない公共事業の実現が必要であるとしています。そして、長期的には労働者にとってより有利な所得分配の改善政策によって有効需要を持続的に拡大させることであるとします。
 本演習では、このような経済学の流れを把握し、ケインズ革命の意味と政府の政策について、世界大恐慌から現代の日本経済の問題を通して考察します。この中で、自らの研究テーマとなる政策課題を見いだせるよう研究指導を行います。
到達目標と卒業認定・学位授与の方針との関連
到達目標は以下の通りです。
①政府の役割に関して、歴史的背景を踏まえたうえで、異なる考え方について理論的に説明できる。
②ケインズの有効需要政策の効果とその限界について理論的に説明できる。
③上記①、②を踏まえて、今の日本経済の問題について分析し、必要な政策について論理的に議論できるようになる。
④自ら政策課題を見出し、修論テーマを設定する。
授業計画
第1回 経済学の考え方と歴史的背景
第2回 資本主義経済の理想の状態としての自由放任主義
第3回 大恐慌とニューディール政策
第4回 大恐慌の経験とケインズ経済学
第5回 J.M.ケインズ
第6回 古典派経済学における雇用理論と雇用政策
第7回 古典派経済学の考え方
第8回 ケインズの有効需要の原理
第9回 消費関数の性質
第10回 非自発的失業と有効需要拡大政策
第11回 限界消費性向と乗数
第12回 現代マクロ経済学の流れ
第13回 国民所得の決定式とケインズ乗数
第14回 インフレギャップとデフレギャップ
第15回 資本の限界効率と投資の意思決定
第16回 投資関数の導出
第17回 IS曲線の導出
第18回 古典派経済学の貸付資金説
第19回 貨幣理論と貨幣数量説
第20回 ケインズの流動性選好の理論
第21回 LM曲線の導出
第22回 ヒックス=ハンセン流のIS-LMモデル
第23回 財政政策と金融政策の効果
第24回 財政政策
第25回 金融緩和政策
第26回 金融引き締め政策
第27回 社会資本と公共事業
第28回 公共事業の経済効果
第29回 ポリシー・ミックス
第30回 公共事業と外部経済効果 
なお、研究倫理(論文著者の責任等を含む総合的な研究倫理教育、利益相反の考え方や守秘義務など)についても併せて指導します。
関連科目
ミクロ経済学、マクロ経済学、理論経済学特論Ⅰ、西洋経済史特論Ⅰ・Ⅱ、経済学史特論Ⅰ・Ⅱ、国際経済学特論
準備学習等の指示
専門の文献の読み込みだけでなく、新聞や雑誌等の経済ニュースや政府や各省庁公表の政策について、問題意識をもつて考察し、常に研究の素材や文献を収集することが重要です。
教科書
大矢野栄次(2018)『ケインズの経済学と現代マクロ経済学』同文舘 
参考文献
別途指示します。
定期試験の実施
定期試験は実施しません。
成績評価の方法
レポーターとしての報告50%、授業参加度50%で評価します。
実務経験と授業との関連
備考