シラバス情報

科目名
研究指導 (経済政策論特殊研究)
授業コード
72016
担当者名
野北 晴子
副題
単位数
24.00単位
配当年次
1年
開講学期
2022年度前期、2022年度後期
教職免許種類

授業内容
 現代のマクロ経済学の理論と政策は、その基礎をケインズ経済学に負っています。「ケインズ革命」以前の「古典派経済学」は、資本主義経済において「絶対多数の絶対幸福」が市場原理によって自動的に達成されることを説明する経済学でした。このような経済学においては、資源の効率的な完全利用と労働者の完全雇用は、市場メカニズムによって容易に達成されるはずのものであり、政府の役割は「夜警国家間」に基づく「小さな政府」でした。
 これに対して、「ケインズ経済学」では、雇用量は有効需要の大きさによって決定されるとします。生産能力が過剰であるがゆえに投資機会が減少し、有効需要が不足することが原因で失業が発生すると説明します。人々は豊かさゆえに雇用機会を失うという「豊穣裏の貧困」から脱するために、ケインズは、短期的には政府による赤字財政政策の実現による有効需要の拡大と、生産能力を拡大しない公共事業の実現が必要であるとしています。そして、長期的には労働者にとってより有利な所得分配の改善政策によって有効需要を持続的に拡大させることであるとします。
 本演習では、このような経済学の流れを把握し、ケインズ革命の意味と政府の政策について、世界大恐慌から現代の日本経済の問題を通して考察します。また、後半では、具体的な経済政策をテーマとして取り挙げ、その成果と評価について分析していきます。これらの議論の中で、自らの研究テーマとなる政策課題を見いだせるよう研究指導を行います。
到達目標と卒業認定・学位授与の方針との関連
到達目標は以下の通りです。
①政府の役割に関して、歴史的背景を踏まえたうえで、異なる考え方について理論的に説明できる。
②ケインズの有効需要政策の効果とその限界について理論的に説明できる。
③上記①、②を踏まえて、今の日本経済の問題について分析し、必要な政策について論理的に議論できるようになる。
④自ら政策課題を見出し、修論テーマを設定する。
授業計画
第1回 ケインズ革命
第2回 有効需要の原理
第3回 貨幣と金融システム
第4回 国民所得概念
第5回 国民所得水準の決定
第6回 乗数理論
第7回 ケインズの投資誘因と利子論
第8回 IS・LMモデルと財政金融政策
第9回 ポリシー・ミックス
第10回 消費関数論争
第11回 古典派経済学と「貨幣数量説」
第12回 インフレーションとフィリップスカーブ
第13回 社会資本と公共事業
第14回 開放体系下のIS・LMモデル
第15回 マンデル=フレミングモデルと財政金融政策の有効性 
第16回 アベノミクスの経済政策と日本経済の現状
第17回 大胆な金融政策の成果と評価
第18回 財政政策の現状と課題
第19回 日本経済の再生と地方創成
第20回 一極集中のメリットと限界
第21回 物流の社会的費用とモーダルシフト
第22回 政府の累積債務解消政策
第23回 社会資本としての鉄道 
第24回 上下分離論
第25回 TPPと自由貿易
第26回 RCEPTと自由貿易
第27回 日本の行政改革と民営化がもたらしたもの
第28回 グローバル経済における問題
第29回 ピケティの『21世紀の資本』
第30回 社会資本の形成と日本経済
なお、研究倫理(論文著者の責任等を含む総合的な研究倫理教育、利益相反の考え方や守秘義務など)についても併せて指導します。
関連科目
ミクロ経済学、マクロ経済学、理論経済学特論Ⅰ、西洋経済史特論Ⅰ・Ⅱ、経済学史特論Ⅰ・Ⅱ、国際経済学特論
準備学習等の指示
専門の文献の読み込みだけでなく、新聞や雑誌等の経済ニュースや政府や各省庁公表の政策について、問題意識をもつて考察し、常に研究の素材や文献を収集することが重要です。
教科書
前半は下記のテキストを使います。後半のテキストについては、別途指示します。
大矢野栄次(2018)『ケインズの経済学と現代マクロ経済学』同文舘 
大矢野栄次(2016)『アベノミクスと地方創成-日本経済のターニングポイント-』創成社
参考文献
別途指示します。
定期試験の実施
定期試験は実施しません。
成績評価の方法
レポーターとしての報告50%、授業参加度50%で評価します。
実務経験と授業との関連
備考