シラバス情報

科目名
マクロ経済学
授業コード
21035
担当者名
宜名眞 勇
副題
IS-LM曲線を用いてマクロ経済政策の効果を考える
科目ナンバリング
単位数
2.00単位
配当年次
3年
開講学期
2022年度前期
教職免許種類
中学一種(社会)、高校一種(公民)

授業内容
マクロ経済分析における財・サービス市場と貨幣金融市場の均衡点の軌跡を表す、IS曲線とLM曲線は財政・金融政策が実施される場合にシフトし、様々なマクロ経済変量に影響を及ぼします。本講義では、もっとも単純なケインズモデルから出発し、利子率、投資支出、輸入を内生化し、IS-LM曲線を導出して、それに基づいて、財・サービス市場、貨幣金融市場、労働市場の同時均衡、即ち、マクロの一般均衡を表すモデルを説明します。それは、政策効果の分析に用いることが出来るとともに、一般物価水準の決定のためにも使うことが出来ます。このような基本モデルの構築の上に、アベノミックスの政策分析、為替レート変化の影響、ポリシー・ミックスのいろいろな組み合わせの効果分析を取り上げます。
到達目標と卒業認定・学位授与の方針との関連
マクロ経済学は実践的な学問です。景気動向、賃金および労働市場の需給状況、企業の売り上げ、物価水準、貿易に関する諸情報、等は個別の企業や家計にとって興味を引かれる問題ですが、これらの経済現象の基礎にあるのは財・サービス、貨幣金融、労働、外国部門といった各市場における経済活動の結果決まるマクロ的変量の動きです。日常生活において多くの経済・社会情報が目の前に現れますが、自らの行動や判断の指針を導く上でそれらをどう活用するかはマクロとしての経済全体の動きを理解する視点、即ち、マクロ経済学的視点が重要です。本講義で身に付く力は、経済全体の動きを理解する上で必要な「知識・理解」、「理論的思考力・分析力」、政策効果の波及過程の理解に基づいた「問題解決能力」です。将来経済的社会的諸問題の解決に当たる際の必要な素養としてマクロ経済学的訓練を身につけうることが社会人として望まれるところです。
授業計画
第1回:基礎的諸概念。経済、市場、付加価値、実質値・名目値、三面等価、事前・事後といった諸概念と変化     率定義と意味を解説し、講義全体の基礎を与えます。
第2回:消費支出のみを内生化し、政府も国際貿易も存在しない最も単純なマクロ経済モデル。ケインズの国     民所得(GDP)決定理論を45度線図を用いて説明します。
第3回:企業の利潤極大化と労働需要関数の導出。短期の生産関数による労働の限界生産物の意味づけと     利潤極大化が実質賃金と労働の限界生産物の一致を意味することを導きます。
第4回:乗数理論。投資乗数の理論をダム建設という公共事業を例にとって説明します。無限等比級数の和の    公式はこの中で与えて使用します。この理論の考え方の応用範囲は広範で、興味の尽きない現象と言    えます。
第5回:政策目標と政策手段:政策主体である政府を導入します。その為に租税を比例税の形で考慮し、可処    分所得を消費の決定因とします。また、投資を内生化するために、資本の限界効率の理論が説明され     ます。
第6回:輸入関数の導入。限界輸入性向を用いた輸入関数を定式化してマクロ経済理論を拡充します。輸出関    数は国外の要因で決定されると考え、本講義では外生変数のままです。
第7回:流動性選好理論。日銀による外生的な貨幣供給と貨幣に対する投機的需要の均衡が利子率を決定す    るという基本的なモデル(理論)を説明します。この利子率は投資関数の説明変数になります。
第8回:信用乗数。日銀は強力貨幣の供給量のみを制御し、貨幣の供給量は銀行組織がきめる信用乗数に依    存して決まるという考え方を説明します。
第9回:アベノミクスの政策分析。政策の影響が波及する経路は伝統的なものではなく、消費と投資に直接影     響することをねらったものです。その考え方を説明します。
第10回:貨幣数量説。古典的な貨幣数量説は多くの非現実的な仮定に依存しているとは言え、その考え方は     我々の思考様式に深い影響を与え続けています。ここではその一形態であるケンブリッジ数量方程式     を使って、古い物価理論をやや新しい形で再説します。
第11回:財政金融政策の効果。45度線図、生産関数、総需要供給曲線、流動性選好曲線を使いながら政策      の波及経路を描きます。
第12回:ポリシー・ミックスによって問題解決がはかられる状況の例として、景気刺激と貿易黒字の削減を取り    上げます。財政政策と金融政策を組み合わせて同時に発動することで2つの目標の同時達成を図る方    法を示します。
第13回:為替レートの変動と輸出入。変動相場制下の為替レート変動を金利と国際資金移動の観点から説明    します。
第14回:為替レートの種類とマンデルーフレミング理論。金利、資金移動、為替変動、輸出入の変動の間に成    立する関係を説明します。
第15回:最後に本講義で用いられた全部の理論を同時に取り上げて、分析の手法と相互の関連性を確認しま    す。

 
関連科目
マクロ経済学基礎II
準備学習等の指示
教科書と毎回配布するプリントを熟読してください。できれば、事前に予習をして講義に臨むことが望ましいことです。毎週2時間程度をこれにあてることが必要です。
教科書
「マクロ経済学」伊藤元重、日本評論社
参考文献
「経済学入門」伊藤元重、日本評論社
定期試験の実施
定期試験を実施します。
成績評価の方法
学期中に小テストを2回実施します。出席点は5点満点で考慮します。定期試験とこれらの結果を加重平均(定期試験が85%、小テストが15%、出席点はさらにそれらに加算されます)して成績評価とします。
実務経験と授業との関連
本講義は理論的な学修を内容としているので、実務経験は必要ではありません。行政や企業勤務の経験は、現実経済と理論との結びつきを実感して学習の意欲を増大させる面があるかも知れません。その効果のほどは不明ですが。
備考
欠席するとその前後のつながりがわかりにくくなり、学修に支障を来します。欠席しないようにしてください。