シラバス情報

科目名
国際貿易論
授業コード
21038
担当者名
野北 晴子
副題
貿易の理論と政策
科目ナンバリング
単位数
2.00単位
配当年次
3年
開講学期
2023年度前期
教職免許種類
高校一種(公民)

授業内容
 国際貿易の理論は、自由、平等、グローバルという3つのキーワードのもと、世界経済において市場原理を活用することによって各国の経済活動は活性化し、やがて完全雇用が実現するという立場をとっています。この主張を支える経済理論の背景にあるのは、「絶対多数の絶対幸福」を「自働的に達成」する 「市場原理」の有効性です。そして、国際貿易理論では、自由貿易の実現によってそのような理想的な市場均衡に世界各国の経済が到達するとしています。従って、世界的市場原理の有効性を阻害する要因があれば、経済政策手段によって除去することが必要ということになります。
 一方で、貿易総額が一時的な不均衡状態、すなわち貿易赤字では一定額の負債、貿易黒字では債権が生じています。この貿易収支問題を解決するためには、国際決済システムを考察する必要があります。貿易赤字国は米ドルをはじめとする国際基軸通貨による支払いが必要であり、貿易黒字国はその受取で外貨の保有増加となります。そのことは、金融収支の増減となり、国際金融問題を生じさせます。
 このように、国際貿易論と国際収支論・国際金融論の分野が別々に議論されています。本講義では、貿易理論の理解を通じて、各国が目指すものが単に自由貿易によって達成されるものではない、ということを明らかにしていきます。
到達目標と卒業認定・学位授与の方針との関連
① 国際貿易の基本的な理論を学ぶことによって知識を増やし 、貿易統計データを見ることで、国際経済問題を体系的に理解できる土台をつくります。そして、ネットを含むマスメディアの情報に左右されることなく、問題の本質を見極める分析力を磨くことで、問題解決力を身に付けます。
②基本的な知識を自分のものとしてもらうため、ERE経済学検定試験などの過去問を含めた復習プリントに取り組んでもらいます。それによって、論理的思考力・分析力をさらに強化します。
【身につく力】「知識・理解」「論理的思考力・分析力」「問題解決力」
授業計画
第1回 ガイダンス
第2回  リカードの比較生産費説〜リカードの数値例
第3回  リカードの比較生産費説〜タイと日本のバナナ価格差で大儲け?
第4回 純数交換による国際貿易〜生産技術は同じで需要条件が異なる場合の貿易
第5回 純数交換による国際貿易〜捕虜収容所内の物々交換で考える比較優位
第6回 ヘクシャー=オリーンの理論〜生産技術も消費構造も同じ国の間で、国際貿易は発生しうる
第7回 ヘクシャー=オリーンの理論〜 資本豊富国は資本集約財を輸出し、労働集約財を輸入する
第8 回 レオンチェフ・パラドックス〜資本豊富国が労働集約財を輸出し、資本集約財を輸入する
第 9 回 市場と交易条件〜交易条件の有利不利とは?
第10回 輸送費と貿易財・非貿易財〜輸送費を考えると、輸出も輸入もできない財が出てくる
第11回 絶対優位の理論〜為替相場の変化と貿易量・貿易額 
第12回 貿易政策〜輸入関税と輸入数量規制・輸入割当、輸出補助金政策と幼稚産業保護政策
第13回 貿易収支を考慮した国民所得の決定モデル
第14回 有効需要拡大政策と失業の輸出
第15回 まとめ
※上記の順序と内容は、進行の度合いや世界経済の状況によって、一部変わる場合があります。
関連科目
ミクロ経済学基礎Ⅰ・Ⅱ、マクロ経済学基礎Ⅰ・Ⅱ、国際経済基礎Ⅰ・Ⅱ、グローバル金融市場論、国際金融論、経済政策論
準備学習等の指示
毎回、復習用のプリントを配布します。それによって講義内容の理解度を各自チェックしてもらいます。わからないことは必ず質問し、できる限りその日うちに解決するようにしましょう。予習をする必要はありませんが、関連する本を読み、新聞、テレビやネットのニュースを見て、常に自分なりの問題意識を持つことが重要です。
教科書
大矢野栄次(2017)『テキスト国際経済学』 同文舘
参考文献
大矢野栄次(2011)『国際貿易の理論』同文舘、矢野生子(2016)『国際経済学の理論と応用』同文舘、クルーグマン、オブズフェルド著、山本訳(2014)『 クルーグマンの国際経済学 上 貿易編』丸善出版、堤未果(2008)『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波新書)岩波書店、その他講義で紹介します。
定期試験の実施
定期試験を実施します。
成績評価の方法
定期試験80%、授業参加度(復習プリントの取組・質問等)20%による総合評価です。なお、定期試験のみの素点の方が定期試験と授業参加度等を加味した総合評価より高い場合は、それを考慮します。
実務経験と授業との関連
備考
貿易理論を学ぶためには、ミクロ経済学・マクロ経済学を履修していることが望ましい。