教員名 : 新垣 繁秀
教員名 : 得津 康義
教員名 : 山根 智沙子
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科目名
人の行動を経済学で読み解く
授業コード
35016
担当者名
新垣 繁秀、得津 康義、山根 智沙子
単位数
2.00単位
配当年次
1年
開講学期
2023年度後期
教職免許種類
授業内容
【授業内容】
みなさんは物事に対していつも冷静に判断していますか?言い換えれば、いつも好みは変わらず、1つ1つのことを丁寧にできるだけ考えた選択を行っていますか?具体的に学生生活の中で考えてみると、試験前「理想的な計画」を立て最後まで実行しましたか?それとも「計画倒れ」におわり、後々、後悔しませんか? これまでの経済学では、「理想的な計画」ができる人々を想定してきました。しかし、現実の社会ではどうでしょうか?実生活の中では、好みは時々刻々と変化し、さらに人々の行動は感情に支配されるため、冷静にコントロールできず、時として聖者として、あるいは凡夫として、自らが表れてきたりします。 そればかりでなく、人には錯覚や「思考のクセ」というのが備わっており、そういったものが多く直感的な判断を取らせています。近年、経済学でも人々のこのような行動を分析する試みがなされています。 この授業では、この直感で行動する場合でも、そこには法則性があることを受講生皆さんが気づくことを目指しています。最終的に、授業で学んだことをベースにいくつかの身近な社会問題を取り上げ、その解決策を提案することを目標としています。 【授業方法】 (1) 各状況下で人々がどのような行動をして、それらを経済学でどのように分析するかを講義します。講義の中では映像、実験、あるいはゲームを通じて学びます。 (2) 講義で学んだことについて受講生が各班(各自)に分かれて具体的例を作ります。その際に学生同士は対話や議論を通じて、意見を集約して、それらをまとめていきます。 (3) 最後に講義の集大成として、講義で学んだことや具体例からよりよい社会にするにはどのような政策を採ればよいかについて各班(各自)で発表し、レポートにまとめます。 到達目標と卒業認定・学位授与の方針との関連
授業は、興動館科目の4つのフィールドの内、企画力に分類される授業で、次のような到達目標を掲げています。
(1) 近年、経済学に大きな影響を与えている行動経済学の基本概念を修得することを目的としています。 (2) 単なる知識修得ではなく、実際の社会に役立つ実践的な経済学の学びをめざしています。 (3) 1つの企画をたてるために必要な複眼的なものの見方(手法)を身につけることをめざします。 (4) 最後にプレゼンテーションする力を身につけることをめざします。 【身につく力】「問題解決力」「プレゼンテーション能力」「協働して成し遂げる力」 授業計画
【授業計画】
第 1 回 オリエンテーション アイスブレーキング・人間力チェックシート【初回】実施 この授業全体のねらいと、受講上の心構えについて、担当教員から受講生へのお願い。 この回では、まず人間力について理解し、どの人間力を身につけたいかを意識します 第 2 回 そもそも経済学を学ぶとはどのようなことか 経済学の基本用語を用いることが、日々の生活において、いかに豊かな思考につながっているか、および、経済学の基本用語「合理的な行動」について、Q&A(および映像)を通して学び、肌感覚で理解する。 第 3 回 経済学と社会的規範 トローリー問題 社会全体の幸福度を高めるには、どの程度、個人を犠牲にしてよいのか?思考実験をしながらみんなで考え報告し、担当教員との議論の中で理解を深める。 第 4 回 社会的な協力の難しさ(1) 囚人のジレンマ イソップ寓話の「ネズミの村」を素材に、皆が協力(協調)することは望ましいと思いながら、それがなかなか実現できない理由を議論の中で理解を深める。 第 5 回 社会的な協力の難しさ(2) 囚人のジレンマの実験 グループワーク(実験)を通して、望ましい協力をしないメカニズムをグループで考え理解を深める。最終的にグループごと実験の結果のプレゼンテーションをする。 第 6 回 リスクと不確実性への態度 論理と直感のズレ サンクスペテロブルクのパラドックスやモンティホール問題を通して、人間の面白い思考のクセを紹介し、みんなで考え、私たちの日々の行動の理解を深める。 第 7 回 リスクの感じ方 損失回避バイアス 人はなぜ負を認められないのか?その感じ方のクセをQ&A(アンケート)を通してみんなで考え、私たちの日々の行動の理解を深める。 第 8 回 お金に関わる経済心理 お金問題を行動経済学で解決しよう 人間力チェックシート【中間ふりかえり】実施 第6回、第7回で学んだテーマに関して、各自もしくは各グループで身の回りにある問題を行動経済学の観点から解決する方法を議論し提案しよう。 この回では、自身の人間力の変化をふりかえり、その変化に対する考えを仲間たちへ伝えます。 第 9 回 先延ばしのメカニズム 時間選好率 課題や宿題の先延ばし、貯金の使い方あるいはなぜダイエットができないか、その行動のクセをQ&A(アンケート)を通してみんなで考え、私たちの日々の行動の理解を深める。 第10回 いかがわしいインセンティブ やる気を引き出すにはどうすればよいか?その際に気を付ける事とは何か? ここでは市場の規範と、社会の規範を混ぜこぜにすると思わぬ結果を招くことを事例から学んでいく。 第11回 ナッジ これまで、人間の行動の選択(思考)のクセを学んできました。ここではダメな選択を賢く良い選択に誘導する考えを消化し第13回目の授業につなげます。 第12回 「ナッジを政策に応用しよう?」 喫煙、肥満、多重債務、宿題の先送りなどの身近な(社会)問題を解決する手立てをグループ毎で考え、そのアイディアを14回目で報告する準備をします。 第13回 課題解決の提案 身近な問題を行動経済学で解決しよう(1) 第9回〜第12回までに学んだテーマに関して、各自もしくは各グループで身の回りにある社会的課題を解決する方法を提案する。 第14回 課題解決の提案 身近な問題を行動経済学で解決しよう(2) 第13回目で提案している方法を各グループでプレゼンしよう 第15回 この授業のふりかえりとまとめ、人間力チェックシート【最終ふりかえり】実施 この回では、総合的なふりかえりを通して、自身の人間力がどのように成長したのかを理解します。 その結果を各自でレポートにまとめよう。 関連科目
経済入門、ファイナンス入門、社会心理学
準備学習等の指示
この授業のフィールドは企画力フィールドです(目標は、身近だけれども、皆が膝を打つような創造力をはぐくむことです)。
この授業は、何か個人の身近な課題(問題)、しかし社会的に見ても大切な課題を発見し、それを無理なく解決することです。そのために、行動経済学で得られた知見を、自らの経験に置き換え、絶えず、自己を顧みることが大切です。また課題の解決案については、(難しいけれども)皆が膝を打つようなものを常に提案できるように心がけてください。 最後に、プレゼンテーションの準備には時間をかけてください。 教科書
原則、教科書は使用しませんが、関連書籍を下記のとおりあげておきます。
授業に関心を持てば、下記の中から1冊でも読んでくれれば幸いです。 参考文献
・大竹 文雄著(2019)『行動経済学の使い方 』 岩波書店
・リチャード・セイラ著(2019)『行動経済学の逆襲 上下 』 早川書房 ・依田高典著(2016)『ココロの経済学』 筑摩書店 ・日本経済新聞社編(2017)『優しい行動経済学』 日本経済新聞社 定期試験の実施
定期試験は実施しません。
成績評価の方法
(1)平常の受講態度と参加度 ・・・ 20%
(2)各回の企画内容など ・・・ 40% (3)プレゼンテーションや提出物など ・・・ 40% なお、(1)と(2)に関しては減点もあり得ます。 レポートは,簡単なコメントを付して返却します。 出席回数が総授業回数の3分の2に満たない場合は不可になります。 実務経験と授業との関連
備考
定員を30名とします。
興動館科目では、あなたの人間力の成長を記録するために、ふりかえりと分かち合いを重視 した「人間力チェックシート」を作成していただきます。 |