教員名 : 中嶋 則夫
|
科目名
マクロ経済学
授業コード
21032
担当者名
中嶋 則夫
単位数
2.00単位
配当年次
3年
開講学期
2023年度前期
教職免許種類
授業内容
われわれの暮らす市場経済社会では、家計や企業という経済主体の選択行動の相互の関連を通じて、豊かに暮らすための財・サービスを効率的に生み出すとされています。その市場経済社会には、経済全体の状態を把握するために重要な指標となるマクロ経済変数と呼ばれる集計された変数があります。これらの変数は、様々な出来事から影響を受け、良い状態を生む場合もあれば、悪い状態を生む場合もあります。これらの状態をわれわれの暮らしをより良いものにするために、様々な政策を通じて維持増進することが必要となります。
本講義では、その政策立案の際注目すべきマクロ変数間の複雑な関係を、見通し良くするモデルを用いて学びます。まず、もっとも単純なケインズモデルから出発し、利子率、投資、海外との取引を内生化し、労働市場を含む一般物価水準との同時均衡を、短期・長期の視点から表すモデルを用いて説明します。 このような基本モデルの構築の上に、経済政策の政策分析、為替レート変化の影響、ポリシー・ミックスのいろいろな組み合わせの効果分析を取り上げます。 到達目標と卒業認定・学位授与の方針との関連
マクロ経済学は実践的な学問です。景気動向、賃金および労働市場の需給状況、企業の売り上げ、物価水準、貿易に関する諸情報、等は個別の企業や家計にとって興味を引かれる問題です。これらの経済現象の基礎にあるのは財・サービス、貨幣金融、労働、海外部門といった各市場における経済活動の結果決まるマクロ的変数の動きです。
日常生活において多くの経済・社会情報が目の前に現れますが、自らの行動や判断の指針を導く上でそれらをどう活用するかはマクロとしての経済全体の動きを理解する視点、即ち、マクロ経済学的視点が重要です。本講義で身に付く力は、経済全体の動きを理解する上で必要な「知識・理解」、「理論的思考力・分析力」、政策効果の波及過程の理解に基づいた「問題解決能力」です。将来、経済的諸問題、それに起因する社会的諸問題の解決に当たる際の必要な素養としてマクロ経済学的思考を身につけることが社会人として望まれるところです。 授業計画
第 1 回 経済学の十大原理(原理4)・ファイナンスの基本的な分析手法では、我々は様々なインセンティブ(誘因)に対応して行動を変化させることを確認する。人生のなかで、インセンティブに促され行う金融上の意思決定は、将来の我々の人生に影響を及ぼすと同時に、経済の重要な指標に影響を与えるため、経済がどのように機能するか理解するために重要な役割を果たすことを知る。
第 2 回 経済学の十大原理(原理1・2・3)では、個人の意思決定を考える上で重要な役割を果たすインセンティブを、トレードオフ、機会費用、限界概念の三つの概念から理解を深める。 第 3 回 経済学者らしく考える、では、科学的方法を用い実証的に経済を見ることが、伝統や慣習などの価値観に基づく規範的主張に影響を与えることがあることを知り、意見の相違を解消する手段の一つとなり得ることを説明する。 第 4 回 相互依存と交易からの利益・市場における需要と供給の作用・経済学の十大原理(原理5・6)では、比較優位に従う分業が多様な人々の存在を認めるために有効な考え方であることを述べ、需要曲線、供給曲線の導出から、それらを用いた均衡価格と均衡数量が持つ意義を説明する。 第 5 回 経済学の十大原理(原理7)・国民所得の測定・生計費の測定・失業と自然失業率、では、われわれの暮らしぶりを数量で示す国民所得が持つ意味とその際注意する必要がある、実質と名目と物価の関係の理解を促す。また、フロー循環図における生産要素としての労働市場での失業との関係を説明する。 第 6 回 生産と成長では、生産性の決定要因が経済成長に影響を与える要素を紹介し、それらの決定要因が整うために必要な環境整備を行う公的部門の具体的な政策を紹介する。 第 7 回 貯蓄、投資と金融システム、では、金融上の意思決定の際、重要な役割を果たす金融システムの仕組みについて理解を深める説明を行う。 第 8 回 貨幣システム・貨幣量の成長とインフレーション、では、長期的に成立すると考えられている古典的な貨幣数量説の考え方を、ケンブリッジ学派の貨幣数量方程式を使って説明する。 第 9 回 開放マクロ経済学:基本的概念、では、財と資本の国際フローとして、純輸出と純資本流出が常に均等することを理解し、為替相場の決定理論として購買力平価の考え方を説明する。 第10回 開放経済のマクロ経済理論、では、貸付資金市場と外国為替市場の結びつきに注目する。純資本流出と純輸出が均等するという事実から、利子率、資金移動、為替変動、輸出入の変動の間に成立する関係を説明する。(マンデル・フレミング理論) 第11回 総需要と総供給、では、総需要曲線ADと長期・短期の総供給曲線ASの導出過程を示し、物価と産出量(実質GDP)との関係を説明し、AD、ASのシフト要因を解説する。 第12回 総需要に対する金融・財政政策の影響、では、まず、流動性選好理論を、中央銀行及び銀行からなる金融システムを通じ外生的に貨幣供給と貨幣に対する取引動機・投機的動機からなる貨幣需要から均衡利子率が決定するという基本的なモデル(理論)を説明する。この利子率が投資関数の説明変数になり、投資乗数の理論を、公共事業の例を用いて説明する。また、ケインズ型消費関数を用いて、支出乗数の説明を行い、乗数効果の理解を深める。その際、無限等比級数の和の公式が、重要な役割を果たす。この考え方の応用範囲は、ファイアンスの基本的な考え方の土台となり、現在価値の計算、複利計算、公債発行に伴う公債管理を考える時にも用いられなど広範に活用できる知識であることも説明する。 第13回 インフレ率と失業率の短期的トレードオフ関係、では、短期では、インフレ率と失業率とのトレードオフ関係、長期では、インフレ率に影響を受けない、経済が長期に引き寄せられる失業率とされる自然失業率について説明する。 第14回 開放経済のおける金融・財政政策によって問題解決がはかられる状況の例を取り上げる。 第15回 最後に本講義で用いられた全部の理論を同時に取り上げて、分析の手法と相互の関連性を確認する。 関連科目
マクロ経済学基礎Ⅰ,マクロ経済学,経済政策論基礎,経済政策論
準備学習等の指示
講義の前後に必ず合計で4時間程度の予習・復習を行うこと。
教科書
N・グレゴリー・マンキュー『マンキュー経済学Ⅱマクロ編(第4版)』東洋経済新報社
参考文献
家森信善『マクロ経済学の基礎(第2版)』中央経済社
平口良司,稲葉大『マクロ経済学ー入門の「一歩前」から応用まで(新版)』有斐閣 定期試験の実施
定期試験を実施します。
成績評価の方法
HUENAVIへの質問への回答提出15点(指定文字数以上が対象)、
期末課題25点、 期末試験60点、 の合計点で評価します。 定期試験を受験しなかった場合は、評価不能となります。 実務経験と授業との関連
なし。
備考
なし。
|