シラバス情報

科目名
財政学特論
授業コード
71019
担当者名
一橋 信之
副題
単位数
2.00単位
配当年次
1年
開講学期
2024年度後期
教職免許種類
高校専修(地理歴史・公民)


授業内容
混合経済体制が成熟した今日、政府(中央政府および地方政府)の果たす役割は極めて大きいといえます。経済学が長らく彫琢してきた市場経済原理の最適化機能に対して、政府がいかにそれを補完し、阻害し、また新しい経済原理を構築するのかを経済学の手法で研究します。財政学は理論と政策の融合学問です。理論を正確に学ぶとともに、それを実際に応用するためには多くの経済市場データを分析する必要があります。本講義では、インターネットで入手可能な官公庁公表の公式データおよびOECDが発表する各国のファクトデータを様々に利用します。
到達目標と卒業認定・学位授与の方針との関連
経済における政府の役割を肯定的側面と否定的側面の両相を正確に理解し、現実に生じる様々な社会経済問題に対して合理的かつ妥当な解決策を提示できる能力を身に付けることです。
【身につく力】「知識・理解」「論理的思考力・分析力」「問題解決力」
授業計画
第1回   財政学の意義とその系譜
財政学の起源と定義、スミス・ワーグナー・マスグレイブの財政学
第2回   政府の役割と機能
財政の3機能と大きな政府・小さな政府
第3回   予算過程と財政民主主義
憲法における財政、日米の予算過程
第4回   財政法と予算編成
財政法の主要規程の解釈
第5回   公共財の意義と分類
純粋公共財と準公共財、クラブ財
第6回   公共財の最適供給理論
サミュエルソン条件とリンダール均衡
第7回   租税の意義と租税原則
租税の根拠論と配分論、公平と効率
第8回   所得課税の仕組みを効果
所得税および法人税のしくみと課題
第9回   資産課税の仕組みと効果
資産税の本質と固定資産税、相続税のしくみ
第10回 消費課税の仕組みと効果
一般消費税と個別消費税、付加価値税の考え方
第11回 財政支出の経済効果
乗数モデルと経済主体の連環性
第12回 租税政策の経済効果
租税乗数とリカード・バローの中立命題
第13回 公債理論と経済効果
重複世代モデルによる経済波及効果
第14回 政府間関係理論
中央財政と地方財政の関連性、地方分権制度
第15回 各国の財政運営
主要国の財政運営のしくみ、国際課税制度

関連科目
ミクロ経済学特論、マクロ経済学特論
準備学習等の指示
受講者はその回の内容を事前に入念に学習し、報告者はその内容を発表し、質問に答えられるよう準備しなければなりません。併せて、報告内容に関連する書籍、資料を予習しておいてください。大学院水準の内容ですから毎週2時間以上の予習・復習が必要です。
教科書
本間正明・岩本康志『財政論(経済学教室8)』培風館、2019年
参考文献
小塩隆士『再分配の厚生分析』日本評論社、2010年

Atkinson,A.B. and J.E.Stiglitz (2015) "Lectures on Public Economics", Princeton Univ Press 

定期試験の実施
定期試験は実施しません。
成績評価の方法
授業での発表内容、授業への参加度、レポート課題を総合的に評価します。
実務経験と授業との関連
金融機関での政府部門リサーチアナリスト、税理士としての租税実務をベースとして、実務に即した授業を行います。
備考
大学院は研究する場ですから、教員から一方的に知識を伝える場ではなく、授業の課題に対して学生とともに情報を収集し、分析し、解決策を考える場です。積極的な授業参加を期待します。