シラバス情報

科目名
経済学史特論Ⅱ
授業コード
71011
担当者名
林 直樹
副題
単位数
2.00単位
配当年次
1年
開講学期
2024年度後期
教職免許種類
高校専修(地理歴史)

授業内容
前期開講の特論Ⅰでは理論的通史を対象とします。
それに対し、この授業では「人口」にポイントを絞った経済思想史の展開を追います。
前期に獲得された知見の肩の上に乗ることができれば、問題をより深くまで掘り下げることができるでしょうが、主題の裾野が経済学の外に及ぶ関係で、特論Ⅰの内容を必ずしも予備知識として求めません。
したがって後期授業単体(前期未履修)であっても取り組むことは可能です。

テキストの著者はアダム・スミスの専門研究者ですが、スミス以前から現代までを広く視野に収め、文明論的見地から「人口と経済」の関係を論じています。
「経済学の父」を経由しながら過去から現在そして将来までを貫く、経済にとっての普遍的な一大問題が、人口であると言ってよいでしょう。

授業では教員による解説を基本線としますが、折に触れてテキストをふまえた発表(レジュメ作成必須)を求めます。
到達目標と卒業認定・学位授与の方針との関連
【到達目標】
(1)各時代・地域・人物に関わる人口論議のコンテクストを精確に捉え、説明できる。
(2)人口と経済の相互作用をめぐる将来的な見通しを提示し、その根拠を論述できる。
【身につく力】
④論理的思考力・分析力 ⑤問題解決力 ⑦斬新な発想をする力
授業計画
第 1回 重商主義の時代:ペティ
第 2回 重商主義の時代:重商主義と人口
第 3回 重商主義の時代:ベーコン主義
第 4回 スミスの時代:モンテスキュー
第 5回 スミスの時代:ヒューム・ウォーレス論争
第 6回 スミスの時代:ステュアートとケイムズ卿
第 7回 マルサスと古典派経済学:コンドルセとフランス革命
第 8回 マルサスと古典派経済学:ゴドウィンとフランス革命
第 9回 マルサスと古典派経済学:J・S・ミル
第10回 ケインズと転換期の経済学:マーシャル
第11回 ケインズと転換期の経済学:ケインズにおける人口変動
第12回 ケインズと転換期の経済学:成長理論と人口
第13回 現代の経済学:人口転換論
第14回 現代の経済学:世代間所得移転
第15回 現代の経済学:経済の成長と長期停滞
関連科目
経済学史特論Ⅰ
準備学習等の指示
【事前学習】
テキストの該当範囲に事前に目を通してきてください。発表を指示する場合もありますので、その際にはレジュメ作りを丁寧に進めてください。
【事後学習】
理解が不明瞭な箇所はどこかを、授業内容を反芻しながら特定し、次回以降に質問できるようにしておいてください。
教科書
野原慎司著『人口の経済学:平等の構想と統治をめぐる思想史』講談社選書メチエ(2022年)
参考文献
経済古典を中心に、適宜指示します。
定期試験の実施
定期試験は実施しません。
成績評価の方法
以下のような比率に基づき、総合的に評価します。
授業への参加度:30% 授業内発表(三回程度):70%
実務経験と授業との関連
備考
経済学において、人口は動かしがたい与件(制約条件)とされる場合があります。
しかし、日本を代表する経済学者の一人となった高田保馬が、同時に社会学を修める中で早くから人口問題に着目していたように、時にはあえて「通常の経済学」の枠外に歩み出てみてもよいでしょう。
それが新鮮な経験となり、翻って経済についての理解を深めることにつながるのではないか、と思います。