シラバス情報

科目名
出版メディア論
授業コード
25018
担当者名
阿部 純
副題
出版メディアの基礎
科目ナンバリング
単位数
2.00単位
配当年次
2年
開講学期
2025年度後期
教職免許種類

授業内容
本講義では、出版メディアの中でも特に日本の戦後の雑誌空間と書店を中心に、出版メディアがどのように社会の結節点として機能してきたかについて概観します。

前半では、今日の出版状況を概観したのち、出版メディアを支える印刷技術について学びます。印刷技術は、マクルーハンのメディ論的に言えば、人類のコミュニケーション史の中でも最大レベルの「変革」を起こしたメディア技術と言われます。そのダイナミクスについて、映像などを駆使しながら学んでいきます。また、本講義では、第5回の授業で外部講師の方をお招きし、ガリ版印刷体験を行います。主に、明治〜昭和の初めに市民の声を伝えるメディアとしてあったガリ版印刷を体験しながら、自分たちの「思い」が紙に印刷されることにかかる労力を知り、多くの人に「伝える」ことの意義を再考したいと思います。今の私たちのデジタル・メディア・コミュニケーションと比較する視座を学びましょう。また、「古い」メディアを「新しい」ものとして捉え、新たな出版市場が生まれている現状についてもこの時に共有します。

その後、中盤には戦後日本の雑誌空間について、主にファッション誌に焦点を当てて整理します。ファッションの流行がどう作られ、ジェンダー観がどのように強調されてきたのかについて一緒に考えていきましょう。その上で、演習では雑誌分析の方法について学びます。「雑誌分析」ではありますが、この分析手法は他のメディアにも応用可能なものです。卒業論文でファッションや音楽などの文化事例を扱いたい方には、ぜひ身につけてほしい分析手法です。

最後は、書店についてです。広島市内も多くの書店が閉店を余儀なくされ、私たちと書籍とのタッチポイントが減少しつつありますが、その中でもブックカフェや個人経営の書店、まちライブラリーなど、新たな業態の本のある場所が生まれてきています。こういった本のある場所について調べながら、これからの出版メディアのあり方について考えていきます。

本講義では、授業の終わりに毎回小レポートを提出してもらいます。小レポートの内容については、次の講義の冒頭で振り返りを行います。そして、中盤と後半にグループワーク演習を取り入れ、出版メディアの内容分析と出版メディアのある場所のリサーチとを行います。各回の中盤か終わりにグループディスカッションの時間を設けるなど、この授業ではアクティブ・ラーニングを実施します。
到達目標と卒業認定・学位授与の方針との関連
【到達目標】
・出版・印刷メディアの具体事例から、現状と課題を把握し、自身の言葉で説明できるようになること。
・雑誌の表象分析の手法を理解し、その手法を使って分析できるようになること。


【身につく力】「知識・理解」「論理的思考力・分析力」「プレゼンテーション能力」
授業計画
第1回 オリエンテーション
第2回 出版概況:自費出版からオンライン書店まで

第3回 印刷1:グーテンベルグによる印刷技術
第4回 印刷2:瓦版・活字・リソグラフ
第5回 外部講師による講義:ガリ版印刷についての講義+印刷体験
第6回 印刷技術と文化、出版市場との関係性

第7回 雑誌文化:ファッション誌の変遷
第8回 演習1・グループワーク:誌面デザインの分析 
第9回 演習1・グループワーク:誌面デザイン分析発表用資料の整理
第10回 演習1:発表・ディスカッション+まとめ

第11回 書店:書店と取次、独立系書店
第12回 演習2・グループワーク:出版メディアのある場所について考える
第13回 図書館:地域コミュニティをつなぐ拠点やまちライブラリーの試み
第14回 演習2・グループワーク:発表資料の整理
第15回 演習2:発表+ディスカッション

演習は、グループワークにて行います。演習回時は、各自パソコンを持参してください。
関連科目
「メディア論」「コミュニケーション論」「メディア文化史」など
準備学習等の指示
配布したプリントを再読するなど、前回分の復習(20分程度)をしてから授業に臨むようにしてください。演習回の前後では、内容分析をする雑誌の調達や本のある場所の調査が予習・復習として入ります(30分程度)。
教科書
教科書は使用しません。毎回プリントを配布し、スライドを用いて講義します。
参考文献
印刷博物館(2020)『日本印刷文化史』講談社
鈴木涼美(2022)『JJとその時代 女のコは雑誌に何を夢見たのか』光文社
難波功士(2009)『創刊の社会史』筑摩書房
ばるぼら ・野中モモ(2017)『日本のZINEについて知ってることすべて』誠文堂新光社
福嶋聡(2016)『書店と民主主主義』人文書院
藤本幸夫(2021)『書物・印刷・本屋: 日中韓をめぐる本の文化史』勉誠出版
松本恭幸編(2022)『地域でつくる・地域をつくる メディアとアーカイブ』大月書店
定期試験の実施
定期試験を実施します。
成績評価の方法
定期試験(60%)、演習時の提出物・プレゼンテーション(25%)、授業への参加度(15%)
出席回数が総授業回数の3分の2に満たない場合には、定期試験の受験を認めません。
実務経験と授業との関連
備考
本授業では、受講生のみなさんの積極的な参加を求めていますので、関係のない私語や居眠りは厳禁です。自身にとって身近な出版メディア(雑誌やマンガ、書店など)と比較をしながら、授業を聴くようにしてください。演習時の無断欠席には、厳正に対処します。