シラバス情報

科目名
経済学史特論Ⅱ
授業コード
71010
担当者名
林 直樹
副題
単位数
2.00単位
配当年次
1年
開講学期
2025年度後期
教職免許種類
高校専修(地理歴史)

授業内容
80歳を超えたライオネル・ロビンズの「経済思想史」ないし経済学史の講義録を読んでいきます。
1979年から81年にかけてLSE(ロンドン政治経済学校)で行われた講義を、当時の学生だったロビンズの孫が録音しており、それが活字化されたものです。

ロビンズは初回講義の中で、経済に関して私たちは公平な見解を持つことができず、往々にして論争に巻き込まれがちだからこそ、「開かれた心と、己自身の見解に対する持続的批判」の姿勢を保つことが重要だと述べました。
古代から中世を経て近代にいたるまでの経済思想の歴史を順次追いかけていくことで、上記したロビンズの言葉の射程がより具体化され、各々の経済人が自らのバイアスを認識し、改めていくことの意義がよりよく伝わるように、この講義は編成されています。

全33講からなる講義録を半期で読み切ることは難しいですが、語りの巧みなロビンズの「活きた」講義の一端に触れるだけでも、感化される所が必ずあるはずです。
到達目標と卒業認定・学位授与の方針との関連
【到達目標】
(1)各時代・地域・人物が有した経済思想を、同時代の歴史的コンテクストに照らして説明できる。
(2)過去の経済思想が現代の経済学ないし経済思想に及ぼしている影響を通史的に把握したうえで、将来に向けたヴィジョンを提示できる。

【身につく力】
④論理的思考力・分析力
⑤問題解決力
⑦斬新な発想をする力
授業計画
第 1回 古代(プラトン、アリストテレス)
第 2回 中世(アクィナスとスコラ学派)
第 3回 近世(小冊子作者たち、ペティ、チャイルド、ロック)
第 4回 カンティロン、重農学派、テュルゴ
第 5回 ヒューム
第 6回 国富論(スミス)
第 7回 マルサスと人口
第 8回 価値と分配(リカード)
第 9回 均衡論と国際貿易
第10回 ミル、サン=シモン、マルクス
第11回 リストと歴史学派
第12回 クールノー、テュ—ネン、レー
第13回 限界革命
第14回 ワルラスとパレート
第15回 ベーム=バヴェルク、フィッシャー、マーシャル、ヴィクセル
関連科目
経済学史特論Ⅰ
準備学習等の指示
【事前学習】
授業レジュメに事前に目を通してきてください。発表を指示された際には、充分に時間をかけて発表用レジュメを作成してください。
【事後学習】
理解が不明瞭な箇所はどこかを、授業内容を反芻しながら特定し、次回以降に質問できるようにしておいてください。
教科書
Lionel Robbins, A History of Economic Thought: the LSE Lectures, Princeton University Press (1998)
ただし、本書の内容をふまえた授業レジュメ(日本語+英語)を配布します。
参考文献
経済古典を中心に、適宜指示します。
定期試験の実施
定期試験は実施しません。
成績評価の方法
以下のような比率に基づき、総合的に評価します。
授業への参加度:30% 授業内発表(三回程度):70%
実務経験と授業との関連
備考
経済学史や思想史は、狭義の経済学の外に目を遣ることが多いため、曖昧な学問だと誤解される場合があります。
しかし、日本を代表する経済学者の一人となった高田保馬が最初は社会学を修めるところから出発したように、「通常の経済学」に閉じこもらないように心がけることで育まれる新鮮な視点が存在する事実にも、もっと目を向けるべきでしょう。

経済についてより深くまで理解するには、経済学とはなにか、を改めて問い直せる位置に身を置くことが、非常に大切になると思います。
経済学史・思想史はそのための強い味方となってくれることでしょう。