本論文は、鎖国時代の日本における中国の役割について論じたもので、二部構成となっている。第一部では、交易関係における経済的意義とそれ以外の意義について検討した。以下、8項目に分けて論じている。
1)輸出入品の種類 2)貿易ルート 3)貿易の政治的背景 4)貿易の影響を受けた都市や地域 5)日本の輸入代理プログラムの政治的・経済的背景 6)貿易外での交渉の意義 7)科学や医学の発展のために書物を輸入することの必要性 8)中国の学者・医者・獣医・僧・芸術家の役割。
第二部では、中国のより抽象的な役割、すなわち徳川政権時代の日本の意識における中国の役割について考察した。その中で、象徴としての中国が、徳川政権の政治的思想の発達の中心にあったことを論じた。以下、7項目に分けて論じている。
1)儒教復活の社会的歴史的背景 2)儒教を学んだ武士階級の勃興 3)徳川政権を正当化するための儒教の利用 4)神道と結びつけることによる儒教の導入 5)日本を中心化するための中華と野蛮の対比の逆転 6)中国の切捨て 7)大衆のイメージにおける中国の役割。