本論は、ニコラス・カルドアの様々な業績をもとに、彼の広範囲にわたる経済理論と政策的主張の一端に触れようとするものである。具体的には、ケインジアン転向後の諸業績を扱った。第1章では、彼の多大な理論研究のうち代表的なマクロ理論、景気循環理論とマクロ分配理論を検討した。第2章では、彼の政策論のうち晩年に著された多くの論文をもとに、選択的雇用税、EC加盟反対論を考察し、さらに、第1章のマネタリズムの貨幣理論批判に加えてサッチャー政権のマクロ経済政策への反駁を検討した。第3章では、彼独自のスタグフレーション論を従来のケインジアン、マネタリスト(フリードマン)の理論との比較を通じて浮きぼりにしようと試みた特に彼の国際緩衝在庫制度論に焦点を当てた。