PCの小型化はこれまでにも継続的に進展してきた。 しかし、これはPCの小型化であって、プロセッサそのものやプラットフォーム全体を半導体チップ上に小型化してきたわけではなかった。 IntelやAMDのような巨大企業はひたすら性能競争と市場競争に明け暮れ、抜本的な小型化へ取り組むことはこれまでになかった。 ところが、「Ultra Mobile」のコンセプトの中に、2008年、超小型・省電力プロセッサ「ATOM」を発表し、新たな可能性を切り開いた。 本稿では、「Ultra Mobile」とATOMプロセッサに関する開発への背景を探り、Intelの技術開発戦略を検証しながら、この技術のPC市場へのインパクトと影響範囲についても検証を行っている。Intelは、従来のPC市場重視の戦略から、組込み市場を含む、汎用RISCプロセッサ市場へのシフトを急速に進め始めた。この戦略変更の背景には、コンピュータの社会的・製品的な位置付けの変化を鋭敏に捉え、受動的ではなく、能動的に技術革新の速度を速めることで、Intelの対象市場を広範化させる狙いがある。本稿では、これらを戦略的に詳解するだけにとどまらず、長期的な戦略において、Intelはプロセッサ製造事業を通じてホームエレクトロニクス市場への強固な足掛かりを築こうとしていることへの警告も発している。