IEEE 802.16は、都市規模の通信範囲をカバー可能な無線MAN(Metropolitan Area Network)の標準化推進を目的として、1999年に標準化作業部会が初めて設置された。2008年はこの始動期とにあたり、2010年にかけて世界規模で事業展開がなされる。FWA(Fixed Wireless Access)用途を中核として標準化されたこの通信規格は、別名を「WiMAX」と名付けられ、高速移動体通信用途の機能を付加した「モバイルWiMAX(802.16e-2005)」の標準規格も策定された。日本国内ではこのモバイルWiMAXをWilcomとKDDI配下のUQ Communicationsが事業展開する。IEEEが主管しているはずの802.16e(モバイルWiMAX)はいつの間にか「ポスト3.5G(または、単に「3.9G」)」と呼称されるようになり、ITU(国際電気通信連合)がこれまで主管してきたはずの携帯電話の領域にまで影響を及ぼすようになっていた。そして、このWiMAXの主幹企業がIntelであり、莫大な投資をこの事業へ行ってきた。本稿では、IntelとWiMAX(モバイルWiMAXを含む)の相互依存関係を詳解することにより、Intelのプロセッサ事業と半導体事業全体に関する長期的な戦略を明らかにしている。通信事業者ではなく、またこの事業に興味もないはずのIntelが、なぜここまでIEEE 802.16に注力するのか、そして「Ultra Mobile」のコンセプトの下ににこのWiMAXがどのうような吸収されるのか、これらの疑問点についても事業戦略上の視点から明らかにしている。