Intelのウルトラモバイル向けの事業戦略は二つの異種な側面を示す。一つは、PCプロセッサ技術を独占し、世界最大の半導体製造事業者として強大かつ絶対的な強者であり、不沈艦のような重厚かつ慎重なプロセッサ事業戦略である。一方において、絶対的な優位性を備えるはずのPCプロセッサ技術は、IBMとマイクロソフトという二社との事業パートナーシップ戦略により支えられてきた。ところが、Intelは最強の半導体製造事業者でありながら、ウルトラモバイル事業においてはこのパートナーシップ戦略を完全に見誤ってしまった。本稿はこの点を検証し、問題点を整理した上で、Intelの今後の事業戦略の要点を明らかにする。とりわけ、戦略的なアドバンテージを有しているはずのハードウェアプラットフォームがそれに見合うだけのソフトウェアプラットフォームを獲得できず、結果的に、Linuxプラットフォームに頼らざるをえない状況に陥っていることは致命的な問題になりかねないを詳説している。特に、Linuxプラットフォームはユーザインターフェイスの中でもGUIに課題を抱えており、これを主プラットフォームとして採用してしまうと、ロックイン戦略の観点からも、コンシューマー市場において致命的な課題となりかねないと結論付けている。