Googleは2010年1月5日に「Nexus One」の販売を開始し,スマートフォンビジネスへ新規参入した。ところが,このセールスは伸びず,Apple iPhoneとは正反対の結果に終わった。ただし,Googleは基本的なマーケティング戦略に関する致命的なミスを犯したわけではなく,製品の訴求性に関する基本的な仕様も手堅くまとめていた。 それでも,投入したGoogleブランド製品はスマートフォン市場には受け入れられなかった。 ただし,この製品の委託生産量が新規参入者として極めて常識的な数であったおかげで,Googleにとってそれほど大きな損失とはならなかった。 Googleのこの失敗は,AppleのiPadの事例とは正に正反対の事例である。 そして,この二社を含む,先端パーソナルデジタル製品ビジネスに係る企業の活動と業績には,従来のマーケティング的な理論とアプローチだけでは合理性と整合性の伴わない結果が生じ始めている。 この矛盾点を補完し,特にパーソナルデジタル製品の開発へ応用可能な戦略的なアプローチが「ロックイン」である。 HaxとWildeは,ロックインの基礎となる「ボンディング」の概念とこのコントロールは競争優位性と密接に結びつくと指摘している 。 本稿は,この点に焦点を定め,とりわけ通信との融合の進む,先端パーソナルデジタル製品群の市場形成の要因について分析・検証した結果を報告するとともに,これらの製品市場における今後の発展の動向について論じている。