本稿は、独立以降重視された国営企業政策の特徴を、スカルノ(Old Order)およびスハルト(New Order)の時代から考察を試みるものである。インドネシアの国営企業は、さまざまの国家政策を実施する際の「道具」として、スカルノ時代では植民地システムから国民国家のそれを目指す過程および集権化した計画経済の推進においてその役割が強調され、スハルト時代では民間部門の経済活動空間を広げその役割を重視するが、経済の基幹部門は国営企業が担うなど、一定の役割が重視され続けた。石油ブーム後の規制緩和・自由化を軸とした市場と競争を意識した経済政策への転換過程において、国営企業の経営問題がクローズアップされるが、国家による干渉やコントロールは堅固であること、また、干渉を縮減させることによるイデオロギー的動揺も大きく、公共性と企業性のはざまの中で模索が続いている点を指摘した。