経済開発における水産分野の可能性と持続可能な水産業の推進に取り組む海洋水産省(KKP)の取り組みは、スシ大臣の強力な指導力によって実施されてきたが、その4年間の成果と課題について海洋水産資源に着目し考察するものである。同国は、水産資源を国家開発の一つと位置付けてきたものの、抜本的な改善と成果につながらず、海洋の漁獲漁業は内水面など淡水漁業の約2分の1に満たない漁獲量となっている。その要因の一つとして、海洋水産資源管理が不十分であること、殊に近隣諸国による違法漁業の常態化と、国内漁業者の水産資源への理解や啓蒙を含む国内資源の危機的状況への認識不足にあるとした。その対策として、国内外の違法漁業に対し漁業法が認める最大限の法的措置とともに、国内漁業者の生活安定と水産資源管理などを通じた島嶼部の経済活性化としての役割と機能を伴う総合海洋水産センター(SKPT)を国内21か所建設するなど、国内水産業振興のための基盤構築に尽力した点を評価するものである。一方、北ナトゥナ海では中国による九段線が重複することから、同海域は強い緊張状態にあり、国軍や国家警察と協力して同海域の主権維持と漁業者の安全を担保するべく、KKPも水産資源の維持・管理に取り組む現状についても明らかにした。なお、本論文のなかで、著者が2019年3月25日に同省大臣のスシ氏と面会し、氏の政策とその目的および成果についてのインタビュー内容も掲載している。