本稿では, Cournot 型数量競争を行う寡占的銀行産業において,預金市場における需要が貸出市場での貸出利子率に依存して決定されるような市場間でのスピルオーバーが存在する金融市場のモデルを構築し,規制と社会厚生に関する分析を行った.市場間での需要のスピルオーバーが存在する場合においても,いくつかの新たな仮定を導入することによって,鈴村{suzu90}で示された 3 種類の過剰参入定理が成立することが示された.したがって,需要のスピルオーバーが存在する場合にはこれらの仮定が満たされなければ過剰参入定理は成立しない.