本稿では、金融革新あるいは金融自由化が叫ばれる昨今において、果たしてそのような自由化(例えば、規制金利の撤廃など)が金融市場の需給均衡を本当にもたらしうるのかという問題意識のもとで、そのような金融自由化の成果を特に受けやすいと思われる貸出市場についての分析を行った。その結果、完全競争市場の下では資金の貸手である銀行と借手である企業との間の情報の非対称性の存在のために逆選抜効果が働き、必ずしも需給の不一致は解消されないこと、すなわち信用割当が発生することが明らかになった。加えて、日本の金融市場の特徴である企業に対するメインバンクの存在も考慮に入れて、顧客関係の形成を伴う金融契約についても分析を行ったが、この契約下でもやはり信用割当は発生しうることを明らかにした。