現実の意思決定状況においては,各意思決定者が相互に独立し,競合する目的をもち,二人の意思決定者の決定が逐次的に行われるような2レベル計画問題として定式化されることが少なくない.2レベル計画問題における意思決定は上位レベルから下位レベルへと順に行われ,各々のレベルの意思決定者は,他のレベルの意思決定者の意思決定の影響を受けながら,自己の目的関数を最適にするように意思決定を行う.2レベル計画問題において二人の意思決定者は互いに相手と自らの目的関数と制約条件を知っており,下位レベルの意思決定者は上位レベルの意思決定者の選択した決定を十分に知った上で自らの目的を最適にする決定を選択し,そのような仮定の下で上位レベルの意思決定者も自己の目的を最適にする決定を選択する.このように定義される解のことをStackelberg解と呼ぶ.本研究では,遺伝的アルゴリズムを用いて2レベル線形計画問題のStackelberg解を導出することを試みる.その際,下位レベルの問題の最適性条件に含まれる相補条件に対して0-1変数を導入することで,2レベル線形計画問題を1レベルの混合0-1計画問題に変換し,0-1変数を0-1ビット列の個体として表現することで,遺伝的アルゴリズムを適用する.得られた混合0-1計画問題の特徴を考慮した初期個体群の生成および対応する遺伝的オペレータを採用したStackelberg解の計算方法を提案し,数値実験によって,Hansenらが提案している変数除去法やGendreauらによって提案されたタブーサーチに基づく計算方法と提案する計算方法の比較を行うことでその有効性を検証する.