2レベル計画問題は,階層組織において上位レベルと下位レベルにそれぞれ一人ずつ,二人の意思決定者が存在するような問題であり,政治,経済,輸送等の様々なシステムをモデル化する際,極めて有用である.本研究では,各意思決定者が相互に独立で,競合する一つないしは複数の目的をもち,協力する動機がなく,彼らの決定には順序があり,後で決定する意思決定者は先に決定した意思決定者の決定を十分認識した上で自己の決定を行う多目的2レベル計画問題について考察する.単一目的2レベル計画問題では,下位レベルの意思決定者が上位レベルの決定に対して最適な応答をするという仮定のもとに,上位レベルの意思決定者は自己の目的関数を最小化するように意思決定を行うという考えに基づいたStackelberg解が解の概念として採用されることが多い.このとき,通常上位レベルの意思決定者の決定に対する下位レベルの意思決定者の最適応答は唯一の決定で与えられるということが仮定される.しかし,多目的環境では,このような仮定はもはや現実的でなく,上位レベルの意思決定者の決定に対して下位レベルの意思決定者の複数あるいは無限の応答を考慮しなければならない.そこで,本研究では,多目的2レベル整数計画問題に焦点をあて,上位レベルの意思決定者が下位レベルの意思決定者の合理的な応答に何らかの主観的な予想を与え,その予想に基づいて決定する状況について考察し,問題を定式化する.また,Stackelberg解を求めるために分枝限定法に基づくアルゴリズムと遺伝的アルゴリズムを用いた計算方法を提案し,数値実験によって提案する手法の有効性を検証する.