本論文では,階層構造をもつシステムにおいて,それぞれが独立し,ある場合には競合する目的をもつ二人以上の意思決定者が同じレベルもしくは異なるレベルに存在し,各意思決定者はそれぞれ一部の決定変数を取り扱う2レベル問題について考察した.第2章では,上位レベルと下位レベルのそれぞれに意思決定者が存在し,各意思決定者が意思決定を行う際には,互いに協力する動機が存在しないような2レベル計画問題に焦点をあて,解の概念やその解法に関する考察を行った.また,第3章では,第2章で考察した2レベル計画問題に対して,問題を定式化する専門家の人間としての判断をより適切に表現するために目的関数や制約式に含まれるパラメータのあいまい性がファジィ数として特性づけられるファジィパラメータを含む2レベル計画問題に焦点をあて,このような意思決定問題に当面した上位レベルの意思決定者の立場から合理的な決定を定義し,対応するStackelberg解の計算方法を提案した.第4章では,第2章で考察した2レベル計画問題を拡張して,各レベルの意思決定者がそれぞれ互いに競合する複数の目的をもつ多目的2レベル計画問題の考察を行い,多目的2レベル線形計画問題や多目的2レベル0-1計画問題におけるStackelberg解の計算方法について提案し,その有効性を検証した.第5章では,一人の意思決定者が上位レベルに,また二人以上の意思決定者が下位レベルに存在するような分権的2レベル計画問題について考察した.ここでは,特に上位レベルと下位レベルの各意思決定者が0-1決定変数を扱うような分権的2レベル0-1計画問題に焦点をあて,1) 上位レベルと下位レベルの意思決定者間に協力する動機が存在しないが,複数存在する下位レベルの意思決定者間に協力する動機が存在する場合と2) 上位レベルと下位レベルの意思決定者間,および,複数存在する下位レベルの意思決定者間に協力する動機が存在しない場合について考察し,1) と2) の場合におけるStackelberg解を求めるために遺伝的アルゴリズムを用いた計算手法の提案を行った.それぞれの場合に対して数値実験を行うことで提案手法の有効性を検証した.最後に第6章では,本論文の結論を要約し,今後の研究課題について述べた.(全118頁)