現在、都市部や地方を問わず、日本各地でアートを題材とした地域活性化、地域振興が行われており、実際に集客効果もあがっているようである。こうしたアートによる地域活性化は創造都市論とも結びつき、ときに産業クラスター論にもとづいて理論的に考察されているが、その多くはどちらかといえば産業集積による地域のにぎわいの創出で終わっており、ポーターが示すクラスターによるイノベーションの隆起、それにもとづく競争力強化といった視点が欠けている。そこでわれわれは経営学の観点からポーターのダイヤモンド・モデルを用いて芸術文化クラスターの核となるべき美術館の競争力について検討を加えた。
美術館の競争力の源は学芸員とその能力であり、これらを強化することを念頭に芸術文化クラスターは構築されなければならない。われわれが本稿で依拠したポーターのクラスター論の特徴は、イノベーションとクラスター内の競争を重視した点にある。こうした視点は美術館の競争力の源ともいえる学芸員の能力向上や能力発揮の場の創出につながると考えられる。