本稿では、長期記憶性を持つ時系列の定式化として代表的なモデルであるARFIMAモデルを取り上げ、これまで先行研究で提案されたパラメータ推定方法の比較分析を行い、さらに、実証分析への応用例として、東京証券取引所の上場銘柄に関して分析を行った。
シミュレーション分析では、代表的な6つの推定方法を比較し、その結果DWT、MODWT、W-MLは他の手法と比べ、あまりよいパフォーマンスを示さなかった。これらの推定方法を使用することを考えた場合、どのウェーブレットフィルタを用いるかというフィルタ選択に改善の余地がある。
実証分析は分析期間としてシミュレーションのサンプルサイズに対応して、短期間と長期間の分析を行っている。分析の結果、シミュレーションとは異なり、MODWTの方が他の推定方法よりもdの推定値が相対的に大きく推定されることが分かった。
また、経済ショックの影響を考慮するためにサブ・サンプル期間に分けて推定を行うと、
推定期間によってdの推定値が異なるという、興味深い結果が得られた。
特にリーマンショックが発生した2008年では、推定方法にかかわらず他の期間に比べてdの推定値が大きく推定された。
共著者:前川功一・永田修一