本稿は2004年日本貿易学会西部部会における研究報告を加筆・修正したものである。当該時期における中国の世界政治・経済に対する基本認識は次のとおりである。すなわち、中国にとって、帝国主義戦争の中で民族解放戦争を経て勝ち取った民族独立であれば、取り巻く外的環境は正しく帝国主義そのものの時代であり、「戦争」の時代であるとの認識を前提条件として、すべてが「戦争に備える」という政治主導型の国民経済構築理論、即ち、反帝国主義――独立自主政治主導型国民経済構築理論が出来上がったのは、当然なことであろう。 その意味において、民族の独立主体性の確立とその前提の下での国民経済の構築を実現するために、重工業発展戦略の道を選んだ。対外関係なり、国内国民経済政策なり、そして為替管理政策もこの重工業発展戦略を計画通りに実現させるため、有利に設定しなければならなかったのである。 本稿は全面的指令性計画期の為替管理の側面から、すべて「戦争に備える」という政治主導型国民経済建設の過程の中で、為替管理政策を如何に実行してきたかを明確にし、普遍的経済法則が軽視されがちな国民経済建設における体制内部に内蔵された外国為替管理面における矛盾点を明らかにした。