1978年中国は建国以来の経済建設の基本方針の一大転換を図り、いわゆる「改革・開放」と呼ばれる政策に転換した。ここでは、「改革」の一環として「開放」が位置づけられているのであり、主体的「改革」の中身がまた「開放」の中身を規定している。このような全面的とも言える改革・開放政策は、二つの側面に関連するといえよう。一つは中国を取り巻く世界政治経済に対する認識に関連しよう。改革・開放政策と前後して、中国は現下の世界政治経済をどう認識し、その中に自己をどう位置づけるべきかの再検討を行わねばならなかった。世界政治経済に対する歴史認識構造を改めれば、中国の対外経済関係の基軸もそれに応じて変えなければならない。今一つはこのような基本認識の基軸に合わせて、国内経済の運営の方針、すなわち国民経済体制なり、システムなりも変革していくという課題が要求される。この意味においては、改革・開放後について議論を行うため、改革・開放へ転換する前提あるいは基礎的条件がはっきりしなければ、その議論自体の客観的歴史的意義が薄くなるのは免れない。 また、上記二番目の側面と関連して、これまで中国を取り巻く世界政治経済環境の下で、国民経済を建設するための経済体制には如何なる内在的矛盾が存在していたのかをはっきりさせれば、何を改革しなければならないのかという改革の中身もより明確になろう。本博士論文はこのような視点に立って、改革・開放前の中国の為替管理システムの運行に焦点を絞って、それまでの為替相場の設定管理を含めた為替行政管理が如何なる前提条件の下で行われ、それを実行する過程において、如何なる内在的矛盾があったかを探り、改革・開放後へ向けての取り組むべき課題を提示した。(A4型用紙、縦置横書き、1頁37字×33行で、173頁。)