本研究は、日本の相続法の基本思想を踏まえ、現行の相続税法の課税方式の問題を考察したものである。相続税の課税方式には、被相続人(故人)の遺産に課税する遺産税と、遺産を相続した各相続人に別々に課税する遺産取得税の二つがあるが、我が国の相続税法はこの二つの方式を折衷した法定相続分課税制度となっている。その制度では、遺産総額を法定相続人がそれぞれの法定相続分を取得したものとして、税額を仮に計算して、その後で実際の相続割合に応じて相続税額(総額)を案分するという二段構えになっている。結果的に、担税力に応じた応能課税原則に沿わない租税負担となるという問題点を指摘し、相続税法が不公平な課税となっていることを明らかにした。