高等学校における商業教育の原点は、企業の経営者を育てることである。その経営者にとって不可欠の分野は、ビジネスに関する法律の知識である。例えば、税理士や公認会計士などの国家試験においても、法律分野の高度な専門知識が問われている。高等学校の商業教育においては、1970年の学習指導要領の改訂によって「税務会計」という科目が新設されたが、1999年の改訂で廃止された。その結果、租税法の学びは、「ビジネス基礎」や「ビジネス実務」という科目の単元として残ったものの、実務対応の視点から見て、租税法の学びが大きく後退したと言える。筆者は、会計分野の基幹科目として「税務会計」という科目を復活すべきではないかと考えている。その理由は、財務会計の応用科目として所得税法や法人税法などの租税法を学ぶ科目を履修させることで、将来のスペシャリストを育成することができるからである。