本論文は,労働時間・賃金所得・労働者数の均衡を同時に達成する労働市場の均衡モデルをベースに,『賃金構造基本統計調査』(2017~2019年)の個票データを用いて労働時間-賃金所得の関係を推計し,賃金率弾力性を計測した。その結果,多くの産業で労働時間と賃金所得には負の相関があり,年齢区分別では,若年層は正,40歳以降は負の相関があった。平均的に実現する賃金率弾力性を計測したところ,若年層は0.72~0.88で,40歳以降は-0.61~-0.47と負値であった。その要因として,本稿は,中高年層の労働供給にみられる顕著な所得効果;労働時間-賃金所得の決定における労使の交渉力;日本特有の賃金体系・雇用慣行;雇用の流動性を指摘する。