景気循環理論には、選好や技術的ショックという外生的実物的な要因のみで発生するとする外生的循環理論と、システムの内生変数およびその構造における複雑な相互依存関係によって循環が発生するとする内生的循環理論の2種類がある。このうち後者については世代重複モデルが取り上げられるのが一般的で、本稿でもこの世代重複モデルにより内生循環を考察する。世代重複モデルは一般に循環解、カオス解といった非正規な均衡解をもつモデルであるが、そのような非正規の発生する条件は一般的には満たされないことが多い。本稿では、Farmerらの先駆的研究で明らかにされたHopf分岐定理による循環解の存在条件について、コブ・ダグラス型の経済の場合は貯蓄関数が利子非弾力的となることから循環解が発生せず、安定均衡解および鞍点均衡解の2種類である可能性が高いことを示す。
つづいて、財政政策の政策効果の安定性については、政府予算制約の果たす役割が重要であり、とくに本源的財政収支を均衡させるような財政政策運営が市場の動学的効率性を改善することを示す。