経営理念を基軸とした持続可能な経営(理念主導型経営)に求められる要件について、リーダーシップ・フォロワーシップ・ナラティブ・内省・制度の各概念を援用し、人的機能の観点から議論した。
リサーチ・クエスチョンは、①経営理念を基軸とした経営(理念主導型経営)には、経営者自身が他者や他組織との係わりを事あるごとに振り返り、日々の経営行動や意思決定に活かすプロセスが肝要ではないか、②ステークホルダーなどの他者が示す言行や価値観への理解・受容を通じて、経営者自身や組織にとっての原点を自ら「再意味づけ」することの反復が制度的に必要ではないか、である。
そこで、理念主導で産学官連携を活かす経営を貫徹する中で、持続可能性、耐性、正当性のある経営組織としての存立を図っているベンチャー型中小企業(医療機器製造業)を対象に、参与観察を伴う単一ケーススタディを実施し、経営者が戦略的に経営理念の「意味づけ」や「再解釈」を反復している様相を「物語(ナラティブ)」と捉え、ステークホルダーへの共有・浸透を図るプロセスを考察・分析した。