本稿は、ベンチャー型中小企業(製造業)が、厳しい経営環境に適応しながらゴーイング・コンサーンとして存続していくため、経営理念を基軸とした経営をいかに遂行しているのかを把握・分析し、知見を導出する探索的研究である。
具体的には、産学官連携スキームを基軸としながら「ナレッジ産業(知識経営)化」を目指すといった、独創的経営を貫徹している中小企業を対象に単一ケース・スタディを実施し、その結果をもとに分析・考察している。
当スタディ企業の経営者の言行からは、自身がイノベーションの実行者として、方針策定から現場での創意工夫に至る過程で発揮しているリーダーシップの実相が把握された。その分析視角は、経営者によるいかなる言行が組織成員の一貫した行動を喚起し、組織の一体感をもたらす現場のモチベーション高揚につながっているのか、経営者が主導する経営理念の具現化を図る戦略からは、人と組織の活性化に向けたいかなるプロセスが把握されるのかである。