本研究では、日本の植民地経営において役割を果たした特殊会社を対象にそこで会計がどのような役割を果たしていたのかについて考察した。 特に、当時の特殊会社が直面した現象―すなわち国策の遂行と営利性の追求―の背景を追うとともに、その中で企業が営利性を確保する手段として講じていた利益捻出に関して、先行研究や新たな事例(南洋拓殖株式会社の事例)を交えながら、再検討した。そこでは、様々な会計処理を通じた利益捻出が、時間と空間を超えて、特殊会社による国策を含めた事業展開を円滑に進めるうえでの必要な手段の1つになっていたことを指摘した。
(角 裕太、清水泰洋)