本稿は佼成図書館蔵『首楞厳経』所載の「首楞厳神呪」に加点される字音点について、中世唐音との対応を確認した上で、中世唐音の体系から外れる例について検証したものである。本資料の字音点を中世唐音の典型的特徴と対照したほか、諸文献所載の「首楞厳神呪」とも対照した。本稿では本資料に中世唐音形が用いられていることを確認した後、①類推による字音と見られる例があること、②「首楞厳神呪」の読誦音として特定の字に安定して呉音や漢音が使用されることがあること、③語によって中世唐音形と非中世唐音形が使い分けられることがあること、④「ハ行転呼音」の例があることを指摘した。