室町時代の文献に見られる漢字音の長形と字音声調の関連
坂水貴司
室町時代には字音形態素単独で1拍(以下「短形」とする)のものが、特定の語の中で2拍(以下「長形」とする)になることがある。このようなものについて、本稿では以下のことを述べた。①漢字音の長形は漢音において発生した事象であった。②長形の出現には段階があり、より早く発生したものと、より遅く発生したものに分けられた。③より遅く発生した長形は漢音声調去声のものに認められることから、上昇調が長形発生に関与していると推測された。
國語と國文学
筑摩書房
第102巻
第7号