本稿では、企業はいかなる目的でAISを構築し、どのような組織特性が見られる場合に、企業業績に結びつくのか、東証第一部及び第二部に上場する製造業企業に対する質問紙調査より得られた回答データに基づき、AISの目的と組織特性を認識し分析に使う変数と、アーカイバル・データに基づき、企業業績に関する変数を設定し、AISの目的と組織特性、企業業績の相関関係を分析した。その結果、経営情報と収益情報、顧客満足が充実することをAIS の目的とし、新技術・新製品を志向する組織特性を有する組織は、業界内で高い総資産営業利益率(Return on Asset: ROA)を上げることとの間には一定の関係があること、また経営情報と収益情報、顧客満足が充実することに加えて、さらにプロセス連携の充実をAIS の目的とし、ビジョン・理念を志向する組織特性を有する組織もまた、業界内で高いROAを上げることとの間には一定の関係があること、また業界内で高いROAを上げる企業は、ビジョン・理念志向であれば、経営情報と収益情報、プロセス連携と顧客満足の充実を目的としてAIS を構築していること、また新技術・新製品志向であれば、経営情報と収益情報、と顧客満足の充実を目的としてAIS を構築していること、が示された。このことから、企業業績(ROA)の向上につなげるには、経営情報や収益情報など事業活動に関するデータの運用・統合を図るだけでなく、プロセス連携や顧客満足を高めるべくAISを活用できるかが重要であり、そのために影響を与える組織特性も重要になる、ということを確認した。一方、AISの目的をいかに具体化しその情報が価値あるものとするかは、AISを活用せんとする意識を有する組織すなわち企業次第であるが、AISの目的と組織特性、企業業績の間には相互に影響する一定の関係性があるものと考えられる。