本稿では、まずハーストンが黒人のフォークロアをどのように定義し、黒人たちのヒーロー、ハイ・ジョンをどう捉えていたのかを、ハーストンの評論や残された書簡、『騾馬と人』を引きながら精査した。次に『火の馬車』におけるアイクと彼の妻ダイナ(Dinah)の関係を元の話と比較し、ダイナの主張を当時の黒人女性が置かれていた状況をもとに考察した。そして『ポーク・カウンティ』における ハイ・ジョンの登場場面に注目し、彼の存在が女性の解放と固く結び付いている様子を検討した。そのうえで、これら二つの戯曲の共通点に鑑み、ハーストンが男女平等の視点から、新しい黒人のフォークロアを戯曲で提示したことを明らかにした。