Dickens の仏革命に対する意識は、人民への同情、圧政への怒りから、必然的な結果であるにしても彼らが貴族を殺害する側に回った時の、人間の凶暴性や不信への批判に重点が移った。その批判のために、作者は語り手の陰に、それに近い存在として Mr.Lorry を置き、彼を巧みに利用しているようだ。彼は作者から与えられたイマジネーションなどの資質に加えて、自ら作品のテーマと言える暴露、再生を体現することで、革命やそれに翻弄される人々をその目を通して語るに相応しい、もう一人の語り手となっているからだ。本論ではローリーの新たな位置づけを通し、作品分析を試みる。