Dickens の『大いなる遺産』の “second ending”は従来、作者或いは主人公 Pip の観点に立って、PipとEstella の「結婚」の暗示で終っていると解釈されて来た。しかし、本論では、主に語り手Pip の立場からこの結末の新たな解読を試みる。この結末それ自体を“original ending”と比較しながら分析すると共に、作品のその他の部分との整合性について論及し、さらに作者の立場からは最後の一文に加えられた草稿から現在の形に至るまでの改訂を根拠に、この“ending”が“original ending”と同様、「別離」の暗示であることを立証する。これにより、作者の変更の意図は読者に迎合するための筋の逆転ではなく、主人公達の精神的結合の明瞭化にあったことが明らかとなる。