Our Mutual Friend(1865)は C.Dickensの作品の中でも従来最も評価の分かれる作品の一つだが、それは一つには表題の軽視から来ていると思われる。実はこの表題は作中ただ一度、ボフィン氏によってのみ用いられる表現である。小論ではその点に着目し、彼の使用法を具体的に分析することで、これを「二者間の相互性を高める友人」と定義する仮説を立て、作中の “our common friend” という表現との比較や、錬金術のメタファを用いたその他の事実上の“our mutualfriend”の例をひくことで実証する。最終的にはこの表現が如何に内容と有機的に結びついた題名であるか明らかにすることにより、作品の再評価を試みる。