K.Mansfield の“Prelude”と“At the Bay”の二作品は制作年代に四年の隔たりはあるが、内容的には連続したものと見なすことができる。本論では両作品を通じて、作者の母をモデルにしたと思われるL.Burnell に焦点を置き、彼女の精神的成長を跡づけることを試みるが、その変化は彼女の「笑い」の質的変化に端的に現れているようだ。人生に対して冷笑的で幻想の世界へ逃避しがちだった彼女は、次第に囚われの身としての人間への共感に目覚める。そのような彼女の人生への肯定的な意識は“At the Bay”の最後で彼女が夫や子供に対して初めて見せる “smile”に如実に示されている。