従来の研究で史料的裏付けが乏しいライン左岸線との競合がバーデンの技術導入と路線選定に多大な影響を及ぼした点を明らかにした。とくにフランス領アルザス地方のストラスブール・バール鉄道の動向とバーデン側の対応を一次史料を駆使して実証的に考察した。この視点からの考察は,バーデン広軌鉄道の戦略性の全体像を理解する一助となるとともに国別鉄道史の枠組みを超えて,ライン渓谷における鉄道建設を理解することに資するものである。加えて,通商路迂回の防止すなわち中小領邦の鉄道政策の特徴は通商路の迂回を防ぐ点にあるとする見解がバーデンでも妥当するか否かを検討した。(16頁)