本稿では、ドイツの経済史家クヌート・ボルヒャルトの業績を手がかりとして、ドイツの産業革命を経済的な観点からのみならず、政治的・社会的および文化的要素も考慮して多面的に取り扱っている。第Ⅰ章では、第1、2、3節で「産業革命」という用語の起源が論じられ、第4節ではボルヒャルトの産業革命論が明らかにされた。第Ⅱ章では、先進国イギリスの影響、ドイツの地理的環境、政治的環境、および社会的環境などのドイツ産業革命の諸特殊条件について取り上げてた。そしてこれらの要素がドイツの産業革命にとって促進要因として作用したのか、あるいは阻害要因となったのかを考察した。またドイツのような後発国にとって大きな役割を果たした国家と銀行制度についても言及した。