我国企業の営業活動に関する研究の現状について、最近の代表的な研究成果と伝統的な販売管理論の枠組みとを対比することで、その意義や問題点を浮き彫りにすることを試みた論文。販売管理論は、間接管理問題、相互作用問題、条件統制問題という三つの基本問題の内、条件統制問題を捨象し、他の二つの問題に研究努力を傾注してきた。しかし最近の我が国の営業活動の研究の意義は、まさにこの条件統制問題の再発見にある。つまり欧米流の販売管理論もその上位理論としてのマネジリアル・マーケティング論も、販売職能とそれ以外の対市場活動との明確な職能分化を前提として成立するものであり、それ故に条件統制問題を販売部部門の与件として捨象したのも首肯し得る事であった。営業研究の意義は、条件統制問題を販売部門にとっての与件とせず、三つの基本問題の同時解決を目指すという我が国企業の営業活動のあり方を再発見したこと、引いてはそのことがマーケティング論そのものの再構築に通じる大問題であることを指摘した。またそれは米国流のマーケティング論の欠陥ではなく、それぞれの国情や時代背景にあった理論が構築されていることも指摘した。(編者:石井淳蔵、分担執筆:石井淳蔵、栗木契、宮内美穂、王怡人、木村純子、入江信一郎、廣田章光、岸谷和広、細井謙一、崔相鐵、竹村正明、清水信年、川上智子)
担当部分:第9章「マーケティング戦略の実行問題としてのセールス・マネジメント」