本研究では、自動車向け塗料業界における、取引ネットワークについて考察した。日産のティア・ワン政策により、自動車関連の部品・原材料メーカーとの取引関係が見直されている。その一環として、一度は取引ネットワークから排除された塗料商社が、再び取引ネットワークに呼び戻されるという事例を紹介し、なぜこのようなことが起きたのかを考察した。商流面だけ見ると、この塗料メーカーは、日産にとっては不要な存在なのだが、この塗料メーカーには、自動車の塗装工程をマネジメントする能力があった。しかも単なるノウハウの問題ではなく、塗装工程に必要な、スプレー・ガンなどの機器メーカーとの強固なネットワークを持っていた。この塗料メーカーに代わって、塗装工程を担当することになった、日産や塗料メーカーは、予想以上にこのマネジメントが困難であることに気付き、この塗料商社を再び取引ネットワークに組み入れることになったのである。本研究では、こうした事例研究を通じてネットワークの持つ資源動員機能について考察した。(共同発表:竹村正明、王怡人、細井謙一)