日本企業の産業財取引においては、取引対象の商品やプロジェクトに対し、内容が不明確なまま取り組みがスタートすることがしばしばある。本研究では、HirschmanのHiding Handというコンセプトを手掛かりに、何故に多くの要素が不明確なままで取引関係が開始されるのかということの事例研究を試みた。事例分析の結果、実際には取引関係が不明確である(Hiding Handによって隠されている)からこそスタートできるプロジェクトが多く、プロジェクトが走り出した後で解決可能で受け入れ可能な問題が明確になり、両者が満足のいく解決策が得られる事例をが確認できた。逆にいえば、あまりに厳格な共同プロジェクトは、スタートさえできない可能性があるということが確認できた。このことが我が国企業に不完備契約の多いことの一つの要因になっていると考えられる。(共同発表:竹村正明・王怡人・細井謙一・原頼利)