販売管理論の成立期の文献レビューから、販売管理論成立の事情の解明を目指すとともに、販売管理論の基本的な問題領域の同定と問題構造の解明を試みた。販売管理論という販売に固有の管理論の成立を要請する基本的問題としては間接管理問題、相互作用問題、条件統制問題という三つの問題が存在する。このうち条件統制問題とは標準化された販売作業の効果を確実なものとするため販売作業が行われる客体的諸条件をいかにして統制するかという問題である。販売管理論はこの問題の解決のための様々な手段を管理対象として包含しようとして領域を拡張し、マーケティング論とほぼ同一の広がりを持つに至る。その結果、販売管理論は固有の研究領域としての存在意義を回復するため、販売部門内部の管理問題に研究領域を限定するのであるが、その際に条件統制問題が捨象されることになる。本稿の結論として、このことが我が国企業の営業部門の実状にあわず、販売管理論の研究成果を営業部門の研究に適用しようとする際の大きな阻害要因になっているということを指摘した。(広島経済大学特定個人研究費による助成研究)