サントリーが、1960年代後半からの、ウイスキーの本格的な普及を実現した「二本箸作戦」と呼ばれる営業戦略の事例に基づき、我が国企業の営業活動の特徴について考察した。我が国企業においては、マーケティング諸職能が必ずしも明確に分化していないことがしばしば指摘される。逆にこのことが、諸職能を統合的に運用し、環境変化に対して機動的な対応が可能になることがある。サントリーの二本箸作戦は、単なるウイスキーの販売活動を超えて、和食とは合わないとされていたウイスキーを、和食と一緒に楽しむという、食文化の変容を引き起こした。文化の変容という大きな環境変化の際には、想定外の自体が頻発する。それに対応するためにも、また変化を引き起こす仕掛けのためにも、様々な職能分野の有機的連携が必要になる。「二本箸作戦」は、我が国企業の営業部門のこうした特徴やその帰結が典型的に見られる事例である。